読み下し

春の日の霞める時に住吉の岸に出で居て釣舟のとをらふ見ればいにしへのことぞ思ほゆる水江の浦島の子が鰹釣り鯛釣りほこり七日まで家にも来ずて海境を過ぎて漕ぎ行くに海神の神の娘子にたまさかにい漕ぎ向ひ相とぶらひ言成りしかばかき結び常世に至り海神の神の宮の内のへの妙なる殿にたづさはりふたり入り居て老いもせず死にもせずして長き世にありけるものを世間の愚か人の我妹子に告りて語らくしましくは家に帰りて父母に事も告らひ明日のごと我れは来なむと言ひければ妹が言へらく常世辺にまた帰り来て今のごと逢はむとならばこの櫛笥開くなゆめとそこらくに堅めし言を住吉に帰り来りて家見れど家も見かねて里見れど里も見かねてあやしみとそこに思はく家ゆ出でて三年の間に垣もなく家失せめやとこの箱を開きて見てばもとのごと家はあらむと玉櫛笥少し開くに白雲の箱より出でて常世辺にたなびきぬれば立ち走り叫び袖振りこいまろび足ずりしつつたちまちに心消失せぬ若くありし肌も皺みぬ黒くありし髪も白けぬゆなゆなは息さへ絶えて後つひに命死にける水江の浦島の子が家ところ見ゆ大意訳:水の江の浦島の子が7日ほど鯛や鰹を釣り帰って。
update:2010年06月06日